60歳前後のあなたへ。
定年後の生活を充実させるための計画、何かありますか？
現役時代は朝から晩まで忙しく働き、気づけば一日があっという間に過ぎていたはずです。
ところが定年後になると、急に時間だけがたっぷり与えられ、何をしてよいかわからず、ただテレビを眺めたり、散歩を繰り返すだけ。暇を持て余すだけの毎日になりがちです。
昨日と同じ今日、今日と同じ明日。
毎朝、目が覚めてから「今日は何をしようか」と考え込んでしまう。
そんな繰り返しの生活はやがて退屈地獄と呼ばれるような、つらく味気ない日常に変わってしまいます。
これまでバリバリと仕事に打ち込んできた人ほど要注意。
定年後の「空白の時間」は大きな落差となり、心に重くのしかかります。
生きがいを持たないままでは、せっかくの第二の人生がただ過ぎ去るだけになってしまうのです。
でも安心してください。
ほんの少し視点を変えれば、定年後の生活はもっと楽しく、より充実したものにできます。
これからお伝えする話をヒントに「退屈地獄」を避け、あなたの第二の人生を明るく過ごしていきましょう。
定年後の男性に待ち受ける悲惨な「退屈地獄」
毎日忙しく働き、取引先からも部下からも信頼されていた。
会議では意見を求められ、後輩からは「頼りになる先輩」と慕われる。
家に帰れば、大黒柱として家族を支え、子どもの進学や住宅ローンを守り抜いてきた。
まさに家でも職場でも“中心”にいた自分。
そんな現役時代も終わりを迎え、気がつけば定年退職。
盛大に送別会を開いてもらい、「これからは自由な時間を楽しもう」と胸を張っていた。
ところが、その気持ちが続いたのはほんの数週間。
のんびりテレビを見て過ごしていると、家族からこんな言葉が聞こえてくる。
「また家にいるの？」
「たまにはどこか出かけたら？」
「何かしたいことないの？」
最初は笑って受け流していたものの、いつしかそれは自分を突き刺す言葉に変わっていった。
“自分は家族の役に立たない存在なのか”という不安が、心の中に広がっていく。
「チッ、うるせえな……」
「俺だってそのうち第二の人生を楽しむんだ」
そう強がってみるものの、次第に気力は萎えていく。
朝はダラダラと遅く起き、昼間はテレビの前に座ったまま。
散歩すら面倒になり、昼寝をして、気づけばまた夜。
昨日も今日も、そして明日も、同じことの繰り返し。
気がつけば暇を持て余すばかり。
ふと気づけば、友だちは旅行や趣味を楽しみ、充実した毎日を過ごしている。
自分だけが取り残されているような、寂しさと虚しさ。
今まで社会のため、家族のために頑張ってきたのに……。
定年を迎えた途端に襲ってくる退屈な毎日。
こんなはずじゃなかったのに――。
これこそ、先ほどご紹介した悲惨な退屈地獄です。
しかも、この問題は決して一部の人だけの話ではありません。
実際、定年後に「毎日が退屈だ」「何をしていいかわからない」「暇を持て余す日々が苦痛」と悩む人は少なくないのです。
特に注意が必要なのは、現役時代にバリバリと働いてきた人です。
責任ある立場で多忙な日々を送り、家でも職場でも「自分の居場所」がはっきりしていた人ほど、その反動が大きく表れます。
なぜなら、仕事には常に「やるべきこと」がありました。
朝から晩まで会議や資料作り、部下の指導に追われていれば、1日があっという間に過ぎていったはずです。
ところが定年退職を迎えた途端、その「やるべきこと」がごっそり消えてしまう。
結果として、時間はあるのに何をしていいかわからない――という空白に放り出されてしまうのです。
また、仕事人間として生きてきた人ほど、趣味や仲間づくりを後回しにしてきたケースが多く見られます。
いざ退職してみると、遊び仲間もおらず、家庭の中でも「夫が一日中家にいる」という状況に戸惑う奥さんとの間に距離が生じやすい。
これがさらなる孤独感や自己否定につながります。
つまり、定年後の退屈地獄とは、単なる「暇」ではありません。
それは居場所や役割の喪失と人間関係の縮小が引き起こす「心の空洞」なのです。
データで見る「定年後の男性の孤独」
実際、内閣府の「孤独・孤立の実態把握調査」によれば、60代では 36.2％ が「孤独を感じる」と答えています。
70代で30％強、80代以上でも36％超と、高齢期に孤独を感じている人が少なくありません。
また、一人暮らしの高齢者のうち、男性で約40％が「毎日誰かと言葉を交わしていない」わけではないものの、コミュニケーションの頻度が低い傾向が見られます。
中には「4日に1回しか会話がない」「誰かと話すのは2週間に1回以下」という回答もあります。
さらに注目すべきは、「孤独を感じていても、それを誰にも相談しない」という層の多さ。
ある調査では、孤独感を持っている人のうち、約48％ が“誰にも相談しない”と答えています。
言い換えれば、孤独を感じる高齢者の多くが、その胸の内を誰にも打ち明けず、孤独を抱え込むという実態があるのです。
こうした数字を見ると、「退屈地獄」が単なる感情の揺れではなく、実際に多くの定年後の男性が直面しているリアルで悲惨な問題であることがわかります。
定年後の男女差 ― 女性はつながれるが、男性は孤立しやすい
同じように現役時代を頑張ってきたとしても、定年後の姿は男女で大きく違います。
女性は「横のつながり」を築くのが得意で、井戸端会議や近所づきあい、趣味や習い事を通じて自然と仲間を作っていきます。
新しい環境でも友達をつくりやすく、その関係を定年後も上手に続けることができるのです。
歳を重ねるごとに、暇を持て余すどころか、やることが増える一方で現役時代と変わらず忙しい人もいるほどです。
私はこれまで20年以上介護の現場で多くの高齢者と接してきましたが、この差は非常に顕著でした。
女性は施設に入所してもすぐに友人を見つけ、笑いながらおしゃべりを楽しむ人が多い一方で、男性は一人で黙ってテレビを見て過ごす人が少なくありません。
こうした傾向は、実際のデータからも裏付けられています。
例えば「友人がいる」と答える割合は、男性41％に対し女性は60％と明らかな差があります。
また、「悩みごとを相談できる友人がいない」と答える高齢男性は50代・60代で3〜4割、70歳を超えると半数近くに達するという報告もあります。
さらに、定年後の社会参加活動にも男女差が見られます。
内閣府の調査によれば、70歳以上で「何らかの社会活動に参加している」と答えた人は男性51.7％、女性44.2％と、参加率自体は男性の方が高いのです。
しかしその内容を詳しく見ると、女性は趣味サークルや娯楽系の活動など、友人関係を育てる“横のつながり”を伴う場に参加する傾向が強いことが分かります。
これに対して男性は自治会や退職者のOB組織など「縦のつながり」中心。
つまり、男性は「参加はしている」のに、そこから新しい友人関係を広げにくいのです。
結果として、現役時代の肩書や立場を失うと、友人や仲間を持ちにくくなり、孤立しやすい。
これこそが、定年後の男性が女性以上に“退屈地獄”へ陥りやすい大きな理由なのです。
60歳を迎えたら定年後の生活を計画すべし
では、なぜ定年後にそのような「退屈地獄」に陥ってしまうのでしょうか。
理由はシンプルです。
定年後の生活を前もって計画していないから に他なりません。
なぜ「無計画」が危険なのか
「退職したら、まずはしばらくのんびりしよう」
「そのうち何か趣味でも見つければいい」
多くの人がそう考えます。
ですが、実際にそのタイミングは訪れず、結局何もせずに暇を持て余す日々を送っているのです。
しかも、定年後は心も体も大きく変化する時期です。
仕事に追われていた頃には気にならなかった衰えが、一気に押し寄せます。
朝の目覚めが遅くなる、体を動かすのが億劫になる、人付き合いが面倒になる…。
これは自然な変化ですが、何の準備もしていないと、そのまま生活全体が縮んでしまいます。
健康の面でも同じです。
急にジョギングやスポーツを始めようとして膝や腰を痛める人は少なくありません。
体力は“急に取り戻す”ことはできません。
無理をすれば逆に老化を加速させ、退屈どころか介護が必要な生活へとつながってしまいます。
さらに忘れてはならないのが経済面と人間関係です。
退職金や年金があるからと油断していると、数年後に生活の見通しが立たなくなることもあります。
また、職場という大きな人間関係を失ったとき、新しいつながりをどう作るかを考えていないと、孤独感に押しつぶされやすくなります。
60歳から始める「第二の人生設計」
だからこそ、60歳を迎える頃からは第二の人生設計を意識することが欠かせません。
「自分はどんな毎日を送りたいのか」
「健康やお金、趣味、人とのつながりをどう確保するのか」
これらを少しずつ考え、形にしていくことが大切なのです。
すでに明確な計画を持っている人は問題ありません。
しかし、もし「まだ何も考えていない」という人は要注意です。
暇を持て余すばかりの定年後を過ごす危険性があります。
60歳を迎えるその時点が、まさに人生の第二章のスタート地点。
ここで一歩踏み出せるかどうかが、これからの20年、30年を退屈地獄にするのか、生きがいある毎日にするのかを決定づけるのです。
定年後の生きがいを見つけておきましょう
定年後の生活計画といっても、
「具体的に何をすればいいのか分からない」
「そもそも趣味なんてなかった」
という人もいらっしゃると思います。
そんな方はまず生きがいを見つけることから始めてみましょう。
生きがいといっても、特別なものである必要はありません。
孫と楽しく遊ぶ、奥さんに恩返しする、地域に貢献する、健康のために運動を続ける――どんなことでも構いません。
大切なのは「こんなふうに過ごせたら幸せだ」と素直に思えるものを持つことです。
生きがいは「小さなきっかけ」から見つかる
いきなり大きな目標を掲げる必要はありません。
例えば――
家族との時間：孫と遊ぶ、夫婦で旅行に行く
趣味や学び：昔好きだった音楽を再開する、英語やパソコンを学ぶ
地域活動：自治会やボランティアに参加する
健康づくり：毎朝のウォーキング、軽い筋トレを続ける
こうした“ちょっとやってみたいこと”が、生きがいの種になります。
実際、介護の現場でも「趣味がある人」「地域活動に参加している人」は、そうでない人に比べて表情が明るく、日々の会話も豊かです。
反対に、家でテレビを見て過ごすだけの生活は、体力だけでなく気力まで奪ってしまうというのを何度も目にしてきました。
生きがいは「具体化」すると動き出す
例えば「孫と遊ぶ」と決めたなら
・どれくらいの頻度で会いたいのか
・一緒にどんな遊びや学びをしたいのか
・そのために今からどんな準備をすればいいか
こうしたことを考えるうちに、自然と行動が具体的になっていきます。
「地域に貢献する」と決めた人も同じです。
ゴミ拾いでも、子どもたちの見守りでも構いません。
小さな一歩を踏み出すことで、仲間ができ、そこから新しい生きがいが広がっていきます。
つまり大切なのは、「自分にとっての小さな生きがい」を見つけること。
それがあるだけで、定年後の毎日は単なる暇つぶしではなく、「やりがいある時間」へと変わります。
来る日も来る日も暇を持て余すだけで、朝から晩までテレビを見続ける。
そんな悲惨な退屈地獄に落ちることなく、あなたの第二の人生をもっと明るく充実させることができるのです。
定年後の生活を充実させるために大事な話
さて、ここまで「定年後の計画」や「生きがい」の話をしてきましたが、いかがですか？
明るく豊かな定年後の生活が、少しずつ頭の中に浮かんできたのではないでしょうか。
「孫と遊ぶのが楽しみ」
「夫婦で旅行に行きたい」
「地域活動に参加して仲間を増やしたい」
――どれも素晴らしい生き方です。
ただ、ここで忘れてはならない、とても大切な話があります。
これを理解しておかないと、せっかくの計画も、生きがいのある暮らしも実現できません。
それほど重要な話です。
その答えはズバリ―― 「お金」 です。
いくら素敵な生活を思い描いても、それを可能にするだけの資金がなければ実現は難しくなります。
生きがいにも「お金」はつきもの
考えてみてください。
孫と一緒に旅行に出かけようと思えば、交通費や宿泊費が必要です。
夫婦で趣味を楽しもうと思えば、道具代や会費がかかります。
地域活動やボランティアも、一見お金がかからないようで、実際には交通費や交際費が発生します。
つまり、生きがいのある生活とは「ただ時間があれば実現するもの」ではなく、少なからず経済的な裏付けが必要なのです。
お金がなければ「退屈地獄」に逆戻り
充実した生きがいのある生活を送ろうと計画しても、それに見合う準備がないまま定年を迎えると、どうなるでしょうか。
・旅行を我慢して家でテレビばかり見る
・趣味も費用がかさむから諦める
・外出を控え、友人づきあいも減っていく
こうして、せっかく避けようとしたはずの「退屈地獄」に、いつの間にか逆戻りしてしまいます。
しかし、決して悲観する必要はありません。
考え、行動すれば「お金の不安」は減らせる
今からでも計画を立て、一歩ずつ行動していけば「定年後のお金の不安」を和らげることは十分可能です。
お金の不安なく定年後を過ごすのに必要十分なお金の話。
焦らず、でも楽観的にもなりすぎないよう、しっかり考えることで、あなたの未来は大きく変わります。
まとめ：定年後を充実させるために
ここまで「退屈地獄」を避けるために必要なことをお伝えしてきました。
・60歳を迎えたら、定年後の生活を前もって計画すること。
・生きがいを持ち、毎日に張り合いをつくること。
・そして、その生きがいを支えるためのお金をしっかり考えること。
この3つが揃えば、定年後の人生は退屈地獄どころか、充実した第二の人生に変わります。
ただし「お金」の部分については、具体的な方法を知っておかないと不安は解消されません。
そこで、定年後に取り組める「稼ぎ方」について、↓のページで詳しくご紹介しています。
退屈地獄で終わるか、充実の第二人生を送るか――分かれ道は“今”の行動です。
ぜひ一度ご覧いただき、あなたの定年後の生活をより豊かにするヒントにしてください。